イエズス会サービス・カンボジア

プリヤディ・グレゴリウス SJ
イエズス会サービス・カンボジア、ディレクター

  イエズス会サービスは20年間にわたり、カンボジアで活動してきました。1980年から、イエズス会難民サービス(JRS)は、カンボジアの内戦中、タイのキャンプでカンボジアの難民や避難民と同伴してきました。1989年に識別のプロセスを経て、JRSのチームは依然としてキャンプに残って、誠意をもって難民たちに奉仕し、もう一つのチームはカンボジア国内で奉仕することを決めました。1990年にJRSは、カンボジアの社会事業省と協定を結び、初めの6年間で障がい者の訓練学校や農村部の総合発展、平和と和解活動に協力することになりました。先駆けとなったグループは1990年にカンボジアに入り、プノンペンに事務所を設立しました。以後JRSは、カンボジアの貧しい人々に奉仕するためにイエズス会サービスを創設しました。
  イエズス会サービス・カンボジア(JSC)は、カンボジアの社会業務省と連携して活動しているNGOで、外務省に正式に登録され、承認されています。JSCは1991年以来ずっとカンボジアで、村々の貧しい人々、障がい者(PwD)、地雷の被害者、難民、そして社会から取り残された人々の同伴と発展のために奉仕し続けています。

ビジョン
  Meta(慈愛)、Karuna(憐れみ)、mudita(利他的もしくは共感的な喜び)、upekkha(調和)という4重のカンボジアの崇高な理想が、平和、正義、平等、そして全てのカンボジア人の生活の充実を生み出す社会を建設することをJSCは目指しています。

ミッション
   貧しい人々の、権利、福祉、尊厳を支持し、貧困を和らげ、教育を改善し、カンボジア人社会と正しい関係を確立するプログラムを実行することで、恵まれない共同体と同伴し、共に活動します。

イエズス会サービス・カンボジアチーム
  JSCチームは様々な人々から成ります。女性と男性、カンボジア人と多様な国籍の外国人、司祭、シスターと信徒、仏教徒とキリスト教徒、結婚している人と独身の人、などです。全ての人は国際的特徴をもったイエズス会サービス・カンボジアの大家族を形成しています。
2013年、23人のイエズス会員(司祭17人と神学生6人)と3人のシスター、そして6人のボランティアがいます。彼らは、異なる10の国籍で、多国籍の共同体としてイエズス会サービス・カンボジアとバタンバン教区で活動しています。

イエズス会サービスの活動地域map
  JSCはプノンペン、コンポントム、シェムリアップ、バタンバン、バンテイメンチェイ、カンダール、そしてコンポンチュナンとコンポンスプーの州境地域の7つの場所で活動しています。全てのチームはカンボジア人によって指揮されています。カンダールではBanteay Prieb(鳩センター)と呼ばれる障がい者(PwD)のためのセンターを運営しています。Banteay Priebではメコン車いすの生産もしています。ここには農家の連帯(Farmers Solidarity)とクメール女性協会(Khmer womens Association)のための農村開発プログラムの事務所があります。黒い地点がイエズス会サービスの活動する地域を示しています。

イエズス会サービスの活動
  イエズス会サービスの活動は、Metta Karuna(慈愛と憐れみ)プログラムと特別プログラムに分けることができます。Metta Karunaプログラムは、社会的・教育的プロジェクトを通して農村地域に住む貧しい人々や障がい者への、アウトリーチ・サービスから成ります。このプロジェクトは、バタンバン、シソポン、シェムリアップ、コンポントム、コンポンチュナンとコンポンスプー両州の州境にある事務所によって調整されています。
  教育プログラムの目的は、教育の質を改善すること、貧しい人々や障がい者への基礎的教育の提供です。このために、学校の改修工事、教員への訓練と手当による支援、奨学金、自転車、学校教育パック、図書館、そして一定のテーマについての農村教育によって貧しい学生たちの支援が行われています。
  社会プログラムの目的は、基本的ニーズ、収入を発生させるプロジェクト、基本的健康サービスの提供を通して、生活の質を向上させていくための十分な資源を貧しい人々や障がい者が持てるように支援することです。障がい者のための車いす、貧しい人々と障がい者のための簡単な住宅、井戸、貯水池、トイレ、収入を発生させるプロジェクト(牛銀行、農業ローン、小規模ビジネスローン)、自家菜園、そして健康サービスの提供を行っています。

特別プログラムは、耳ケアプログラム、ブックレット製作、健康石鹸、職業訓練校、子どもセンター、農村開発、そして車いす製造、などのプロジェクトを通して人々に奉仕するものです。

1. 障がい者(PwD)のためのBanteay Prieb職業訓練校
プノンペンからおよそ25キロ離れた、カンダール州のAng Snoul地区に、JSCは障がい者のための職業訓練校を運営しています。ここは、Banteay Priebと呼ばれ、その意味は、鳩センターです。

このプロジェクトの全体的目的と具体的目的は、以下の通りです。

電気クラス

電気クラス

1.雇用可能な技術ときちんとした仕事を獲得するという障がい者のニーズに応えること
2.社会生活する上で必要な基本的能力を構築することによって障がい者を支えること
3.当事者同士の共同生活を通して、障がい者の自尊心、自信、幸せを改善すること
4.障がい者のコミュニティーで、彼らが社会・経済的活動に活発に参加することを保証すること
5.障がい者の家族やコミュニティーにおける、貧困と障がいの悪循環に取り組むこと
6.社会の価値のある貢献するメンバーになれることによって、障がい者に対する汚名を減らすこと
7.商品の製造や研究と開発、マーケティング、そして能力の強化を通して、障がい者が財政的に自立できるよう仕事と収入を作り出すことによって彼らを支えること

  この学校は、縫製、彫刻、電気、機械、農業、そして靴作りの技能学習を提供しています。
  毎年、100人の障がい者を受け入れ、彼らは一年間センター内に寄宿します。

日本からのゲストと共に、LMHの子どもたち

日本からのゲストと共に、LMHの子どもたち

2. 障がいをもった子どもたち(CwD)のためのセンター: Light of Mercy Home
  このプロジェクトの全体的目的は、障がいをもった子どもたちが自立し彼ら自身の将来を作っていくのに適した、彼らの可能性を十分に引き出す教育、ケア、活動を受ける機会を与えることです。この施設には、視覚障がい、聴覚障がい、ポリオ、また他の様々な身体障がいをもつ42人の子どもたちが宿泊しています。彼らは、プノンペン周辺の州から来ています。JSCは彼らの障がいに応じて適した学校に通わせています。

 

 

耳ケアプログラム

耳ケアプログラム

3.耳ケアプログラム
  イエズス会サービスの耳ケアプログラムは1999年に始まりました。その時、私たちのソーシャルワーカーとヘルスワーカーは村々の子どもたちを訪ね、聴覚障がいと耳疾患で苦しんでいる痛ましい数の子どもたちを見つけました。わたしたちの活動の目的は、彼らが直面している社会的統合の問題にうまく対処するよう助けることと同様に、聴覚に問題のある人々に医療的な支援を提供することです。私たちはプノンペンとバタンバンで耳のクリニックを運営しています。プノンペンのクリニックでは、私たちのチームは、耳鏡検査、聴力検査、適した補聴器を合わせること、外科的手術措置の必要性の査定を行っています。外科的手術はいつもバタンバン救急病院で行われています。シェムリアップで私たちは、スクリーニング試験、聴力検査、耳の洗浄、そして基礎的な治療を行っています。バンテイメンチェイでは、患者は初期治療を受けられ、そしてもっと必要なとき、プノンペンに紹介されます。

JSC製作の絵本

JSC製作の絵本

4.ブックレット製作
  ブックレット製作の目的は、学生や子どもたちによい読む教材を提供することです。それによって、彼らの読解力は維持され、もしくは進歩し、読書の習慣をつけることの奨励、そして物語から道徳を学ぶことを助けます。一年間にJSCは22冊のブックレットを出版します。それらは教育プロジェクトの一部として、村々の図書館に配布されます。ブックレットは、また市場にも売りに出されます。幾つかのNGOは、彼らのプロジェクトに配布するために私たちのブックレットを買います。

 

5.健康石鹸
  このプロジェクトは1997年に始められました。社会はまだ内戦の傷跡を帯びていましたので、公的な医療サービスは十分には確立されていませんでした。衛生は人々の関心事ではありませんでした。シラミや赤カビ病が流行っていました。こんな冗談がありました、水のあるところ、魚がいる、髪のあるところ、シラミがいる。人々の健康を促進するため、JSC2種類の健康石鹸を作りました。シラミ用と、赤カビ用です。

6.農村開発(RD)
  農村開発には、貧しい農家の連帯協会(Poor Farmer Solidarity Association, PFSA)とクメール女性協会(KWA)という二つの主な活動があります。PFSAは農家の生活を改善し、連帯と責任感を築き、彼らの生活、家族、共同体の持続可能な発展へ向けて連帯の本当の意味を追求することを相互に助け合うための農家の協会です。リボルビング・ローンの制度を通して、協会の会員に、財政的支援、農業の機会、小規模ビジネスや他の生活のプロジェクトに利用できる小規模ローンを提供します。
  更なる発展は、KWAが創設されたことでした。それは、次のようなニーズから生まれました。1)よい衛生上の実践について共同体のメンバーを教育すること、2)子どもたちや大人に識字教室を提供すること、3)健康への関心と実践を呼びかけること、その他、村のそのようなニーズ。KWAはまた米銀行や村の図書館の責任も担っています。

農村用にデザインされたJSCの車いす

農村用にデザインされたJSCの車いす

7.車いす
  車いす生産の目的は、障がい者の移動と、彼らが社会的・経済的生活に加わることを助けることです。特に障がいをもった学生が学校に行けるように、三輪自転車も製造されています。三輪自転車に乗ることで、彼らはよりたやすくより遠くまで移動することができ、あまり疲れなくなりました。最近では、私たちは三輪オートバイも製造しました。数人の障がい者がそれを買うことができ、ずっと長い移動が可能になりました。私たちは州のネットワークを通じて、車いすや三輪自転車を障がい者に配布してきました。障がい者のために活動する幾つかのNGOもJSCから車いすを購入しました。
  平均的に、1年間に車いすを1,000台、そして三輪自転車を10台生産しています。そのほとんどが障がいをもった人々によって生産されています。

 

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