書評:『日米地位協定入門』前泊博盛著 / 創元社 / 2013年3月

 戦後、日本は、1952年にサンフランシスコ講和条約によって、連合国軍との戦争状態を終結させ、主権国家として国際社会の仲間入りを果たしました。同時に日本は、アメリカとの間で、安全保障のために、米軍の日本国内駐留を定める、日米安全保障条約を締結します。その際、在日米軍の日本における強大な権益を認める「日米行政協定」をも締結してしまうのです。1960年、日米安全保障条約の改定に伴って、日米行政協定も改定され、「日米地位協定」として新たにされました。しかし、日米地位協定は、日米行政協定と本質的には何も違いはなかったのです。
 本書は、日米地位協定の本質を解説するものです。そこで明らかにされているのは、米軍は、沖縄だけでなく、日本国本土のどこにでも自由に基地を作ることができる、ということです。それに従えば、オスプレイのような危険な軍用機を、米軍は日本の基地のどこにでも配置することができるし、日本の上空のどこででも飛行させることができるのです。また、在日米軍には、様々な法外の権利が与えられています。その中の最たるものは、在日米軍の治外法権でしょう。つまり、在日米軍は、日本の国内法も憲法さえも、その適用範囲外なのです。結果的に、米軍は日本国内でやりたい放題であり、それらに対し、もともと日本政府は何ら制限を加えることができないのです。例えば、在日米軍兵による基地周辺での犯罪が減らないのも、この為なのだということがわかります。著者は疑問を呈します。日本は本当に主権国家なのか、と。
 本書は、戦後日本の、みじめな対米追従外交の真実を知ることができる貴重な文献であり、一方、それが為に、私は読んでいて、日本人として暗澹たる気持ちになりました。しかし、だからこそ、多くの方に読んでいただきたい本だといえるでしょう。米国という国に対して、正しく関わるためには、現実をありのままに知り、そして、よく考えることが必要なのですから。
(山本啓輔、イエズス会社会司牧センター)

 

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