「七十二人の集い」ひきこもり支援活動紹介

沖下 昌寛 SJ

  2010年聖家族の祝日に設立ののち、2011年3月より活動(相談室)を始めました。2012年には、1月から毎月第2・第4木曜日に祈りの会、4月からは毎月第1日曜日にひきこもり支援の意向のミサ、また10月8日「カトリックひきこもり支援東京大会」を開催することができました。同大会を企画する中に「さまざまな生きづらさを抱えた人たちとともに」とメッセージを掲げるようになりました。そして、私たち当事者は、すべての人に味方になっていただきたいと言う思いを新たにしています。  初めに、祈りの会を紹介します。今年の復活節「神のいつくしみの主日」に読まれたヨハネ福音書の一節に深い感慨を覚えていたので、そのみことばを祈りの会の「テーマ」に使いました。  
  祈りの会では、求める恵み、「テーマ」のみことば、黙想と振り返りの間は沈黙を守ることなどのさまざまなヒントを記したプリントを用意しています。7月26日のプリントには、ヨハネ福音書20章24節から29節「見ないで信じる人たちは幸い」を記していました。求める恵みはいつも「自分を見つめ、心を砕く。」にしているとおり、みことば以外は毎回同じ内容です。  
  10時45分開会、プリントにしたがって、始めます。みことばを朗読した後に祈りのヒントになることを話します。聖書の注解であることもあり、みことばに導かれた自分自身への振り返り、みことばから連想する思い出、みことばに支えられ励まされた感謝などさまざまです。  
  その日は、次のようなヒントを話したのでした。デドモと呼ばれるトマスは、主イエスの導きにより受難の傷跡に指を入れることで、復活したイエスが、十字架にかけられたあのナザレのイエスであることを確かめたこと。そうしてトマスは復活の証人になれたのだ、と。この話は二千年前のこと、今の私は、何をどのようにしたら復活の証人になれるのか。それは、私は私の傷跡を開示すること、この傷跡が私が私であることの証し。私が傷跡を見せるのは、復活したイエスがトマスに示したのだから、私も同じように示す。      
  普段、七十二人の集いのために考えていることが、この日のヒントの中にありました。当事者性とカトリック教会の教えを大切にすること。七十二人の集いのひきこもり支援は社会運動を教会内に持ち込んだものではありません。傷跡に覚えがある者たちが集い、今の私たちの痛み苦しみ、辛さ、恥ずかしさを自認し、主イエスキリストと共にいる。そのための活動です。

  1. 日本には約70万人とも言われる「ひきこもり」の人びとがいます。「ひきこもり本人」も「ひきこもり家族」も社会参加に困難を味わい、孤立した状態でひきこもり生活を続けています。社会生活の再開を望みながらも、社会から遠ざかり人目に付くことも少ないのです。「ひきこもり当事者」の痛み苦しみ、胸の内の叫びを主イエス・キリストを通して父である神のもとへ届けるためにミサを捧げたいのです。
  2. 「ひきこもり」は支援を得ることができます。ひとりでは困難なことも支援者と共にやりやすくなります。社会と再び出会い、心の窓、家庭の窓を開けられるように恵みを願いたいのです。
  3. 「ひきこもり」は社会的に負の意味づけがなされ、名乗りにくいのが現状です。一人ひとりは無名の当事者であっても共にミサを捧げたいのです。ミサに与るときは「ひきこもり支援」の意向を願い、ミサの中で祈りましょう。

  月に一度だけの機会に限らず、ミサに与るときはいつでもこの意向をもってミサに与りたいと思っていますし、人にも勧めています。また、主日のミサをささげる際に、それがある意向のためであるのは例外であるとしても、「ひきこもり当事者と支援者のための意向」は許されるはずだと考えています。      
  この意向のミサの後に分かち合いの集いを開いています。当事者と家族の雑談、座談の場所になっています。毎回ミサの終わりに招いていますが、ミサだけで十分ですと仰る方たちの方が多く、分かち合いの集いの参加者は、5人から10人くらいです。

  最初から、木曜日の午後2時から4時までと、7時から8時20分まで、相談活動をしています。始めたころは、来談者がいないときもあり、ここに親の居場所が開かれていることに意味がある、知っていても訪れられない方たちが第一歩を踏み出すときを待つ、などと思っていました。少しずつ知られるようになり、複数の方が居合わせるようになりました。人と一緒になると、話せる場面が見られるようになったので、隔週で予約制に移行しました。その後、相談の申し入れが増えたために、毎週予約制に変更しています。

  SST(生活技能訓練Social Skills Training)ワークショップを年2回、春コース秋コースの形で行っています。ルーテル学院大学の正田久子先生の指導、1回2時間30分。今年、春コースは隔週全4回、秋コースは毎週全6回、参加者は10名前後でした。来年度の企画を立てているところです。

  これらの活動をまとめるつもりで本年10月8日体育の日「カトリックひきこもり支援東京大会」を企画実施しました。テーマは「ひきこもり明け」、夜が明けるように、新しい年が明けるように、ひきこもり生活から社会生活を再開して行く様子をイメージした造語です。正午開会に続いて当事者のひきこもり明け体験に関するシンポジウム、2時半から祈り、3時からミサ。ミサ閉祭により、大会閉会。

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