【 HEADLINES 】ヨーロッパの移民政策/パラグアイでの体験から

イエズス会ローマ本部の社会正義事務局(Social Justice Secretariat)では、社会使徒職で働く世界中のイエズス会員と協力者からの報告を、ホームページに掲載している。今号から順次ご紹介したい。

フランシスコ・デ・パウラ・オリビア SJ
アスンシオン(パラグアイ)

【パラグアイでの体験から】     
  私の人生は、長い長い見習い修行だ。そして、私の最高の教師は、アンダルシアやラテン・アメリカ、特にパラグアイの貧しい若者たちだ。
  現在の見習い修行は、パラグアイのバニャド・スル・デ・アスンシオンで、16,000人の住民たちとともに続いている。この地域は10年に一度、4mの 深さの洪水に遭い、被災者は9ヶ月もの間、町の大通りにならぶ木造の小屋で暮らさなければならない。パラグアイ川の水がやっと引いて、住民が家に戻って も、生活は一からやり直さなければならない。
  バニャド・スルは、人間性と非人間性の境目だ。住民の90%は貧困のうちに暮らしており、半分以上の人々の暮らしは本当に悲惨だ。最も足りないのは仕事 だ。まともな仕事どころか、どんな仕事もない。町にはゴミの山があり、男も女も子どもも、一日2ドルを稼ぐために働いている。暑さと湿気で息苦しく、人々 は体をすっぽり覆って仕事をしなければならない。他の人たちは、小さな手押し車を押して町を歩き、プラスチックゴミを集めている。彼らは町まで、毎日往復 2時間かけて通っている。
  バニャド・スルに下水はなく、排水は道に流している。若者たちはドラッグの虜(とりこ)になって、マリファナやコカインを買う金欲しさに、毎日、盗みを起こしている。その上、しばしば水道も電気もない。栄養不良も深刻だ。
  だが、それでもなお私は、バニャド・スルはパラグアイのモラルの宝庫だと思っている。こんな状況でも、人々は生きる希望を強く持ち、親切で連帯にあふれている。彼らからそうしたの美徳を奪うことは、何者にも不可能だ。そこには喜びと平和が満ちあふれている。
  私がここで学んだのは、バニャド・スルの社会団体協会の顧問として、また三つの教会の神父として、彼らとともに闘い、彼らの側にいることが、私の信仰を生きる道だということだ。私は”Thousand in Solidarity”と協力して、14~18歳の若者500人が奨学金を得て大学に進学できるよう支援している。
  だが、私が学んだ最も大事なことは、81歳になっても心は若くいられることだ。これこそ、若者や貧しい人々がくれた最大のプレゼントだ。私も彼らのように小さい者になろうとしているのだろう。[2009年12月]

【ヨーロッパ南部国境の移民政策】
  南ヨーロッパのイエズス会が行ってきた活動は、南ヨーロッパ諸国に共通する不正を浮き彫りにしている。イエズス会難民サービス(JRS)は2009年5 月7日と5月15日に、リビアからイタリアの海岸に上陸しようとした何百人もの人々が、全員強制帰国させられたことに、強く抗議した。保護の必要性も調査 せずにリビアに帰国させたのは、国際法とEUの法律に違反する行為であるが、イタリア政府はそれを「非正規移民との闘いにおける歴史的進展」だと正当化し た。イタリア政府はまた、非正規移民を犯罪とみなす法律を導入した。
  JRSの声明は訴えている。「EUの政策は合法的な移民の条件を厳しくしており、ヨーロッパへの移民はますます非合法化され、多くの移民が危険にさらさ れている。リビアは、こうした移民に何の保護も与えていない。リビアは1951年の国連ジュネーブ条約に署名しておらず、いかなる難民庇護システムも持っ ていない」
  一方、国連難民高等弁務官のアントニオ・グテレスは、ローマ訪問の際、「ギリシャにおいて、難民が国際人権法に基づいた対応を受けていない」と懸念を示した。また、JRSはマルタにおいて、マルタ領海での政府の捜索救援活動(Search and Rescue)が不徹底であるとして、地中海における捜索救援エリアの設定を改善するよう求めている。
  ヨーロッパ議会では、スペインの議員から、「ヨーロッパ南部国境管理の民主的運用」について提案された。24ページからなるこの文書は、スペイン・イエ ズス会移民サービスによって作成されたもので、ヨーロッパ連合の南部国境管理の仕組みについて分析している。それによると、ヨーロッパ連合の国境の一部は 北部アフリカに入り込んでおり、少なからぬ非正規移民が収容され、基本的人権を侵害されている。同文書は、ヨーロッパ議会の議員たちに、難民が収容されて いるEU内外の収容所を訪問するよう、強く勧告している。[2009年7月]

 

 

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